それ西国坂東秩父の順礼ハ、大聖権者の草創にして、尊き霊場なれバ、貴賤あゆみをはこび、かしらをかたむけずといふ事なし、
しかれども、遠山遥海の長途になづミ、老たる者、まづしきやから及びがたく、女ハいましめの関にあぐみ、おのずから止ぬ、
あゝたまたま真如実相の春の花を、いたづらに外山の霞にかくされ、万法一如の秋の月ハ、空しく幽谷の雰に埋る。
此度闇夜のまよひを出ずして、又いつかをか期せん、奴愚蒙の身ながらこれをなげき、方三里の内にて有がたき御作といひ傳へしを尋ね探り、
やうやう三十三所と成し、即順礼并昔の御歌になぞらえ狂歌をうそぶき、つつしんで棒奉る、大聖あに捨給はんや、勝縁なんぞことんくぁらんや。
足立順礼うた此度令改板もの他 天保五甲午仲春日 足立郡塚越村 願主 高橋休山
|